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中谷日出子さんインタビュー


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6月21日金曜日、晴れ渡る空のもと、中谷日出子展 Conversations within the silence」が始まりました。

取材した初日のオープン前には、親しくしている方々が集まり、中谷さんの北海道初個展を記念してお祝いをされていました。手作りサンドイッチやジュース、軽快なバイオリンの生演奏の中、中谷さんも歓談の時間をゆったりと過ごされたご様子でした。その中で、中谷さんの作品に込めた思いを伺い、また、展示をご覧になられたご来館者の方々にも感想を取材しました。

 

 

 

  〈中谷さんご挨拶から抜粋〉


私の絵は、タイトルが無いです。タイトルが無いことを大事にしています。ときどき、言葉は心で感じていることをふるいにかけてるみたいだな、と思います。

見ている方たちが感じたことが、本当の絵という感じがします。私が何かを伝えたいというよりは、見ている方が感じていることがその絵です。絵を見ながら、そんな時間を楽しんでいただけたらいいなと思います。

私はただの筆だなぁと思います。その人が感じるものを描けたらいいなと思っています。



〈中谷さんインタビュー〉


絵を見てもらうことに関して


>その人がその人らしくいるのがうれしいです。言葉や考えることをちょっと横に置いて、ありのままの時間、 何を感じてもいい自由な時間があっていいと思っています。

誰にでもあると思うのですが、良いとか悪いになる前の自然な感じも好きだし、

わからない時は、「わからない」が答えなのかなと思ったりしています笑



絵の見られ方が人によって違うことに関して


>人間の想像力、感性は素晴らしいなと思います。

例えば、人間は星を見て、美しいで終わってもいいのに、星と星を繋いで星座や物語を作りましたよね。

それが人間の感性なのかなぁ、と思ったことがあります。

絵の感想をお聞きしていると、へぇ~って思ったり、すごいなぁ、そう見えるんだ?と思ったりするので、他人事のようにいつも聞いてておもしろいです。


抽象的な絵だからか、同じ絵でも、料理人の方が「野菜に見える」と言ったり、整体師の方が「筋肉に見える」と言ったり、その人が普段考えていることとリンクして、感想をいただくことがあります。


同じ絵を見てても、みんなちがう絵を見てるんですよね、きっと。

どの方がおっしゃることも正解です笑



書き方について


>感覚に従って、ずっと追っている感覚です。考え始めると変な絵になるので、そう感じたら一度とめます。少し待って、もっと下の、おなかの奥みたいなところと対話するような作業です。間違えた、と思っても、そこで直さずにいけば、後で必ずその部分が生かされた絵になります。 

昔の絵はたぶんもっと暗かったんですよね。それもその時はよかったのだと思うのですが、何か癒されていったのか、色や形や自由度が変わってきていると思います。



〈お客様の声〉


・作品に対し、色々な思いが出ていると感じた。

 

・色自体は透明ではないのに、透明感を感じる絵だった。

 

・今年は震災があったのに、暗い気持ちでなく描けていることがすごいと思った。

 

・作者は心が綺麗で、柔らかい人だと感じた。


・サインと制作年月日がほしい。作者の歴史や心境を感じたい。


・(サインや年月日が)無いのも良さだと思う。(ご夫婦の会話)


・一緒に見ている仲間内でも感じることが違って面白かった。

 

・優しい雰囲気を感じた。自分だったら、対象を見てそのまま描いてしまうが、作者は赴くままに、独創的に描いていると感じた。

 

・私には出せない色。見ていて清められる。



〈編集後記〉


取材をする前に、中谷さんのホームページで作品や書いてあることを拝見したのです が、そうして聞きたいことを考えれば考えるほど、「画面上であれこれ思案するより も、これは絵と御本人に直接お会いして、見て感じないと(絵にこめた思いや空気感は)わからない」と思いました。


取材前は緊張していたのですが、初めて現物を見て、その空間に自分が存在することで、初めて見る絵なのに、不思議とほっとしました。中谷さんの絵と、中谷さんの 「言葉を置いて良いよ」のメッセージに癒されました。


中庭で取材していたので、取材中もどこからか鳥の羽が舞ってきたり、アリが飲みかけのコップに入ってしまったりしたのですが、その度に中谷さんは、「綺麗だね。祝福かしら?」「自然の仲間だものね」と全く嫌がらず、スルーしがちな小さな自然のひとつひとつに対しても、自然体に接していることが印象的でした。



展示準備のために来樽してくださった中谷さん、取材にご協力くださった皆様、ありがとうございました。

詳しい展示の内容はぜひ、美術館にてご覧ください。

ひとつひとつの絵との対話の時間をお楽しみください。